象牙については、レンジャーとの銃撃戦、殺しなどもある密輸者との現場の闘いが書かれた書籍がお勧めです。著者はケニア野生生物公社初代総裁を努め、政府、大統領や政府高官とのやりとり、象牙をめぐり象を殺す人々の暗く広がっている世界を自分の体験を持って本にまとめた秀作です。
【アフリカゾウを護る闘い―ケニア野生生物公社総裁日記】
アフリカで密猟品の一斉摘発 ナショナルジオグラフィック
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20081119-00000000-natiogeo-int
ケニア野生生物公社(KWS)のナイロビ本部に並べられた象牙や毛皮の摘発品。2008年11月17日の記者会見で公開された。
(Photograph by REUTERS/Antony Njuguna (KENYA))
アフリカで違法な野生動物取引に関する過去最大の一斉摘発が実施され、アフリカゾウの象牙1トンをはじめ、毛皮製品数点やカバの歯などが押収された。ケニア野生生物公社(KWS)とインターポール(国際刑事警察機構)が今週、明らかにした。
世界最大の国際警察機構であるインターポールがおとり捜査を遂行した結果、アフリカの5カ国で57人の容疑者が逮捕された。そのうち4人はケニアのジョモ・ケニヤッタ国際空港で象牙製品を密輸しようとした中国人だという。中国人はアフリカに急速に進出してきており、象牙の密輸にも大きく関与しているとみられている。
アフリカ諸国では大規模なインフラ計画や油田開発が実施され、中国からも大量に人材が流入した。アフリカ大陸における中国人の人口は、過去5年間で約20万人から80万人近くまで増加している。
「中国人の増加は象牙の密売に直接関係する重要な要因となっている。これは特定の地域に限った問題ではなく国際的な課題だ」と野生動物の違法取引に詳しいエズモンド・ブラッドリー・マーティン氏は語る。
象牙の世界貿易量は2004年以来、一貫して増加を続けており、その最大の輸出先が中国となっている。国連の象取引情報システム(ETIS)によると、1998〜2006年の間に中国当局によって押収された象牙は年平均で39トンに及ぶという。アフリカやアジアで密猟の被害に遭っているゾウは年間で4800頭〜2万頭に上ると推定されており、今回の逮捕だけでは密猟の撲滅にはほとんど効果がないと専門家らは警告している。
「密猟者は完全に使い捨ての存在だ。貧困がはびこる現地の状況を考えれば、一部の闇業者を逮捕しても、別の闇業者が進出するだけだろう。買い手と仲介業者を根絶することが重要な課題だ」とマーティン氏は指摘する。
今回の一斉摘発はかつて密猟者に殺害されたガーナ人のレンジャー、ギルバート・ババ氏にちなんで「ババ作戦」と名付けられ、捜査に関与した保護関係者らは、「ここ数週間で逮捕された末端の密売人を事情聴取することで、裏に潜む大きな闇組織の存在も浮かび上がるだろう」と話している。こうした闇組織はゾウやチーターの密猟に直接手を下すことはないが、密売で得られた現金のマネーロンダリングを行い、密猟の存続を助けている存在だ。
KWSの広報担当ポール・ウドト氏は、「国際的な情報が逮捕者から幅広く得られたので、黒幕がどれほど遠くへ逃げようとも必ず捕まえてみせる」と意気込んでいる。KWSは、ほかの取締機関とも連携して今後も密売組織の摘発に努める予定だ。同氏によると、「違法な野生動物取引はマネーロンダリングや薬物取引とも複雑に絡み合っている」という。野生動物取引を仲介する闇業者は多額の利益を手に入れている。
「ケニア国内の密猟者は象牙1キロに対し35米ドルしか得られないが、隣国エチオピアに渡った象牙には100ドルの値が付けられることもある。中国に密輸されれば800ドルという高値で取引される場合もある」と前出のマーティン氏は述べている。